1980年「仮面ライダースーパー1」に
主演した特撮ヒーロー:高杉俊介
自衛隊の精鋭レンジャー部隊出身で
子供たちの憧れの存在となった
●子供の頃から高杉のファンだった落合(仮名)さん
高校時代に映画撮影所に通い、ファンレターを出していた
2003年1月10日、当時落合さんは29歳
電話が鳴り「はじめまして仮面ライダースーパー1でヒーローを演じていた高杉と申します」
電話の相手は憧れの高杉を名乗る男
ファンレターから実家を割り出し、
実家の家族が落合さんの番号を教えた
「実は変身道具一式を役者仲間に貸したところ、他の人の手に渡り取られてしまいました。そこで取り返すための費用、80万円を貸していただけないでしょうか?」
「80万円?」
詐欺だと思いつかず、貯金を崩し、80万円を用意
待ち合わせ場所に現れたのは紛れもなく本人だった
「80万円の件、考えていただけましたか?」
「でも初対面の方にお貸しするのは…」
「それに何がいけないんです?私は芸能界にいるから逃げることはできません。私は正義のヒーローを演じたから決して悪いことはできないんです」
懐から用意してきた借用書を取り出し、テーブルに
「ヒーローのピンチに貸してもらえませんか?」
「分かりました」
お金を借りたお礼にと自宅に招き、家族を紹介
さらに落合さんは、仕事がなく困っていた高杉のため
高杉公認のファンサイトを立ち上げた
そしてファン交流会を定期的に開き、高杉を応援
しかし金の無心は、続いた
20万円お借りできないでしょうか?
闇金の金利が高く40万円お借りできないでしょうか?
決まって“これはあなたにしか相談できない
”落合さんが特別な存在だ”と念押ししてきた
2003年から10年に渡り、計100回以上、総額2426万円
さらに高杉はファンサイトを利用し、
別のファンからも金を借りていた
●新潟県在住の女性:田中(仮名)さん
2004年7月、夫の別居中だった田中さん
家庭と仕事に疲れていた彼女のよりどころが、
高杉のファンたちと交流できるファンサイト
そこに田中さんが日頃の悩みを書き込んでいた
すると高杉本人からメールが
“応援してくれてありがとう。でも僕がこうやって個人的にメールしたのは皆さんには内緒ですよ”
その後、携帯メールで悩みを相談するように
いつも田中さんを気遣う心優しい言葉が送られてきた
そして田中さんをカラオケボックスに誘い、
特撮番組の主題歌を歌ったり、
ヒーローポーズを披露してくれるなど、
まるで恋人のように元気づけてくれた
ある日のこと高杉から一通のメールが、
“知人に渡した変身ベルトがヤクザの手に渡ってしまったんです。ヤクザからの請求は1000万円。必死に集めましたが、あと100万円足りません”
“私が何とかします”
79万円を借りて、高杉の口座に振り込んだ
その日以来、田中さんの給料日が
近づくと金を無心するメールが届くように
2013年までの9年間で総額2400万円
●落合さんと田中さん
2013年、私設ファンクラブを立ち上げた落合さんとやり取りをしていた田中さん
「彼、ヤクザにベルトを取られたみたい」
「えっ?私も9年前に同じこと言われて私がお金を払って取り返したんです」
「えっ?嘘でしょ?」互いにお金を貸していたことが判明
すぐに高杉に電話して金を返すように催促
帰ってきた金額は、わずか40万円
田中さんは警察に相談
居所が分かり、少額でも返金されると詐欺として成立しないと言われた
そして妻と離婚した高杉は2014年に姿を消した
●裁判
2016年4月8日、36万円返還を求めて平岡(仮名)さんが訴訟を起こした
被告として出廷要請が出されている高杉に、直談判するため
落合さんと田中さんも集結
しかし高杉は裁判に出廷しなかった
裁判手続きの中で高杉の新しい住所が判明
ファンは自宅に突撃し、借金を返すように訴えた
「お金を返し始めたら本当のことを言います。今言うと全部ウソに取られます。騙したように思われているのは致し方ないと思います。でも今自分自身でこれから返していこうと思っております。本当に今まで申し訳ございませんでした」
と頭を下げて返済を口にした
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